正解を出さない相談をする理由

お金の悩みを抱えたとき、
「正解を教えてほしいな」と思ったことはありませんか。

相談業務や講義の質疑応答の場面で、
「どれを選べばいいですか?」
「正解を教えてください」
と聞かれることがよくあります。

選択肢が多いからこそ、迷うのは当然です。
ただ、その場で正解を一つ示すことが、
必ずしもその人にとって最善とは限りません。

私は相談の中で、あえてすぐに答えを出さないことがあります。
少し意外そうな顔をされることもありますが、それには理由があります。
お金の相談では、数字の前に、整理しておきたいことがあるからです。

それはあなたの心です。

なぜ正解を出さないのか

今の生活もこれからの生活も大切にしたいと思う気持ちは、おそらくみんな同じでしょう。
あなたはどんな生活を大切に過ごしたいですか?
そこをもっともっと、掘り下げて、あなたの心の奥の想いを、ゆっくりと見つめてほしいのです。

お金の使い方に正解はありません。
それは人それぞれ価値観が違うものだからです。
みんながみんな同じ使い方をして幸せになるわけではありません。

あなたの理想とする人生はどのようなものでしょうか。
あなたの大切な夢や目標を現実のものにするために、いつ、いくら必要になるのでしょうか。

漠然と「100万円貯めたい」と相談されることがありますが、
あなたはそのお金を何に使いたいですか?

お金を何のために使うのかが見えていないままでは、途中で迷いが生じやすくなります。
貯め方だけを知って実践すれば、おそらく目標額に到達することはできるでしょう。
ただそのあと「ところでこのお金をどうすればいいんでしょう」と
立ち止まってしまう方も少なくありません。

もっと具体的に、あなたのやりたいこと、叶えたいこと、想像してみてください。
それが豊かな人生を歩むための一歩になります。

整理から始める意味

あなたは何に不安を感じているのか、何を守りたいのか、何を優先したいのか。
そんなことを、少し立ち止まって考えてみてください。

世の中には、さまざまな金融商品があります。
たとえば投資信託ひとつをとっても、数千本もの商品が存在します。
目的がはっきりしないまま選ぼうとすると、途中で迷ってしまうのも無理はありません。

仮のゴールで構いません。
いまの時点で思いつく範囲で、「何のためにお金を使いたいのか」を言葉にしてみましょう。
それをもとに、必要な手段を考えていくほうが、結果的に遠回りになりにくいと感じます。

「この商品を勧められたけれど、どう思いますか」
「こちらと比べて、どちらが得でしょうか」
こうした質問に、数字で答えることはできます。
ただ、数字上で有利な選択が、必ずしもその人の暮らしに合うとは限りません。
だからこそ、その人が何を大切にしたいのかを、最初に知りたいのです。

それを知るために、あなたの心の奥の想いが必要なのです。

それでも答えは必要なとき

もちろん、いつまでも考え続けるわけではありません。
整理が進み、何を大切にしたいのかが見えてくると、不思議なほど判断は早くなります。
どの商品を選ぶか、どの制度を使うか。
選択肢が多くても、迷いは小さくなります。

決断が遅れる原因は「情報不足」ではありません。
多くの場合「自分が何を大切にしたいのか」を言葉にできていないだけです。

焦らず、比べず、少し立ち止まって整理する。
その時間があるからこそ、その後の選択に納得が生まれます。

答えを出さない相談が目指しているもの

正解を教えてほしい、そう思う気持ちは自然なことです。
ただ、お金の選択において大切なのは、
「正しいかどうか」よりも、「その人の暮らしに合っているかどうか」
だと私は考えています。

答えを出さない相談は、決して遠回りではありません。
むしろ、あとから振り返ったときに、
「あのとき、きちんと考えてよかった」
と思えるための時間です。

もしあなたが今、お金のことで迷っているなら。
すぐに答えを探す前に、あなた自身の気持ちを少しだけ見つめてみてください。
何に不安を感じ、何を守り、何を大切にしたいのか。
その整理こそが、あなたにとっての最初の一歩になるはずです。